本を読んでも人間関係は変わらなかった
世の中にはたくさんの本があり、手軽に知らない知識を得ることができるものとして重宝してきた。
しかし、本を読んで知識を得たり、解決を試みたものの、何も変わらない、どうしようもない、役に立たなかった本もある。
その本とはいったい……それは、人間関係の悩みを改善できそうなことが書いてある本だった。
書いてある内容といえば、他人は変えられないから自らの考え方を変える?とか、自らの対応の仕方を変える?とか、挙句の果てに他人に反応しないようにする?とかっていう感じである。
はぁ、何それ……。
なぜ他人の無神経な言動のことで悩んでいるのに、自らを改善しなければならないのか……不思議に思いながらも、タイトルに惹かれていろんな本を購入して読んでいった。
そして、ほとんどの本にはこんなことが書いてあった。
他人は変えられないので自分を変えるしかないと……。
ちなみに過去も変えられない。
変わらなかった現実
読んでいた頃に、自らを変える努力はしてみた。
自らの考え方を変えてみようとか、こんな時はこんなふうに対応すればとか、反応しない方がいいときは無反応でいようとか……。
少しずつ、時間をかけて、そしてゆっくりと、それらの本に書いてあったことを実践していった。
これで人間関係の悩みが少しは軽減する、と思っていたが……特に何も変わらなかった。
ていうか前にもまして腹が立ち、夜には反芻が始まり眠れない状態になってしまった。
そして違和感のような、なんかしっくりこない変な感じになっていった。
そのうちストレスが溜まり、怒りと不安が入り乱れ、体調にも影響が出始めた時、それが何なのかやっと分かった。
他人を変えられないのに、自らを変えられる訳がない。
人間なんて、そう簡単に変わらない。
考え方を変えようとした努力も無駄になり、本を買ったお金も無駄になり、挙句の果てに時間まで無駄にしてしまった。
じゃあ、どうすればいいのか?
人間関係を改善する本は、確かにその場しのぎの「付け焼き刃」でしかないことが多い。
「三つ子の魂百まで」という諺もあるように、生まれ持っての気質や育った環境は、そう簡単には変わらない。
本を読んで感化されたとしても、それが定着しなければ、元に戻ってしまう。
そしてまた別の本を手に取り、同じことの繰り返し……。
だけど、じゃあ本当に何もできないのか?と言えば、そうではない。
本を読んで変えられなかったのは「自分」ではなく、「無理をしてまで変えようとしたやり方」かもしれない。
自分を無理やり納得させたり、我慢を美徳に変えようとしたところで、本心が納得していなければ反動がくる。
人間関係を変えるには「環境を見直す」という視点
ものすごく複雑な人間関係を本を読んだくらいでなんとかしようとしたこと自体が間違っていた。
本には限界がある。
人間関係の悩みを本気で改善したいなら、「自分を変える」よりも「自分の置かれている環境を変える」方が効果的な場合がある。
つまり「立ち位置を変える」ということだ。
でもこれは、相手より優位に立つ、マウントをとる、という話ではない。
それでは、また別のストレスが生まれるだけ。
そうではなく、「自分が居心地のいい場所」「自分らしくいられる環境」に少しずつ身を置いていく、という意味での立ち位置の変更だ。
言いたいことが言えない場所に無理していないか? 不安を抱えながら毎日を過ごしていないか? そうした問いを自分に投げかけて、必要なら距離を取る。時には人間関係の「リセット」も考える。
心身を壊してからでは遅いから……。
本当に必要なのは、「感情との付き合い方」
いつも思うのだが、人間の感情くらい不確定で不安定なものはこの世に存在しないような気がする。
だからこそ、「こうすればうまくいく」なんて一発逆転の解決策はない。
でも、だからといって何もできないわけじゃない。
まずは、自分の感情を否定しないこと。
腹が立ったら「腹が立った」と認める。
悲しくなったら「悲しい」と言っていい。
そうやって、自分の感情と丁寧に向き合うことこそが、遠回りのようでいて、実は人間関係で疲れないための第一歩になる。
最後に
本当に悩んでいる人間は、「わらをもつかむ」思いでその本にお金を出している。
だからこそ、世の中にある「答えっぽい言葉」だけに流されず、自分自身の感情と環境に耳を傾けることが大切なのだと思う。
本はあくまで参考書。
最終的に「自分自身のことを決める」のは、自分だけだ。
どうか、あなたが疲れ果ててしまう前に、「離れる」「変える」「見直す」という選択肢を、自分自身に許してあげてほしい。
イラスト:「イラストAC」AZARASHI
投稿:2021.1.5 火曜日